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パーフェクト・ブルー*4(終)

注意
死にネタです。暗い。また大変人を選びます。
注意書きを熟読し、かつ、どんなものでも構わないという方のみお進みください
責任はもてません

・フレンが死んだ後にユーリが立ち直る話です
・フレンはあまり出てきません
・出てきませんが、フレンは結婚しますし、最終的には子持ちになります
・結婚相手などオリキャラが複数登場します
・ユーリ→(←)フレン
・ユーリはずっと可哀想。フレンも可哀想
・本当にどんなものでも大丈夫な方のみお進みください。気分を害されても責任は取りかねます
・本編・シナリオブック・ボイノベ準拠、それらのネタバレを含みます
▼追記

パーフェクト・ブルー*3

この作品は性的描写や過激な表現を含むため、18歳未満の方の閲覧はご遠慮願います。
閲覧パス:「協力秘奥義の単体HIT数」・「親友の身長」を並べた数字5桁。

パーフェクト・ブルー*2

・注意
死にネタです。暗い。また大変人を選びます。
注意書きを熟読し、かつ、どんなものでも構わないという方のみお進みください
責任はもてません

・フレンが死んだ後にユーリが立ち直る話です
・フレンはあまり出てきません
・出てきませんが、フレンは結婚しますし、最終的には子持ちになります
・結婚相手などオリキャラが複数登場します
・ユーリ→(←)フレン
・ユーリはずっと可哀想。フレンも可哀想。
・本当にどんなものでも大丈夫な方のみお進みください。気分を害されても責任は取りかねます
・本編・シナリオブック・ボイノベ準拠、それらのネタバレを含みます
▼追記

パーフェクト・ブルー*1

ワンクッション!

・注意
死にネタです。暗い。また大変人を選びます。
注意書きを熟読し、かつ、どんなものでも構わないという方のみお進みください
責任はもてません

・フレンが死んだ後にユーリが立ち直る話です
・フレンはあまり出てきません
・出てきませんが、フレンは結婚しますし、最終的には子持ちになります
・結婚相手などオリキャラが複数登場します
・ユーリ→(←)フレン
・ユーリはずっと可哀想。フレンも可哀想
・本当にどんなものでも大丈夫な方のみお進みください。気分を害されても責任は取りかねます
・本編・シナリオブック・ボイノベ準拠、それらのネタバレを含みます
▼追記

その花の名

※アレフレ掌編
その声を聴けの続きで、その影を殺せでザウデに行く前の話






馬鹿げていると自分でも思った。


「待ちたまえ。君は…そうだな、少しそこにいてくれ」
「はい?」

言ってから思わず出た頓狂な声が失礼に値することに気づいて、慌てて非礼を詫びた。彼はそんなことには少しも興味はないようで、さっと目を通した提出した報告書から次の書類へと手を伸ばした。たった今僕の出した物には問題がなく下がってよい旨が告げられたというのに、珍しく少し言い淀んだ命令に疑問が残る。隣に立つルブラン小隊長と少し目を見合わせる。彼は安心しろとでも言いたげに軽くうなずいた。特にアレクセイ閣下がお怒りであるわけではないらしい。確かに、負傷した小隊長の代行として報告書提出にやってきた一介の兵士に説教することがあるとは考えにくい。そもそも取り立てて重要な任務でもない、新たに帝都に引き抜かれてきた小隊員の実地訓練のようなものだった。負傷と言ったって単なるぎっくり腰だ。…つまりは。

「フレン、君はそこに掛けていてくれていい。ルブラン。少し気になるところがある、こちらへ」

そう言いながら彼はルブラン小隊長を手招きする。ルブラン小隊長は多少緊張した面持ちで彼の所へ歩み寄った。掛けていろと言われたが、客人用の豪奢なソファに腰掛けることがなんとなくためらわれて2、3歩後ろに下がって背筋を伸ばしていることにした。だが彼はそれを目ざとく見つけ、ふっと微笑んでそれから口を開いた。

「大丈夫だ、別に君をこれから叱咤するわけでもなんでもない。少しだけ話をしたいだけだ。だからゆっくりしていたまえ。無論、立っている方が楽だというならば立っていてくれても構わないが」

その言葉に顔を赤くし、とりあえず返事もそこそこに僕は静かに腰を掛けた。



アレクセイ・ディノイアその人から、寵愛を受けているなどと思ったことはない。いや、寵愛はされているのだろうか。それが、彼のまごころとか、誠実さだとか、そういったものから来ていて、その愛が全て自分に向いているなどと、思ったことはない。

別段、他の誰かの話を特別聞いたことがあるわけではない。自分とアレクセイの関係も、立場の弱みに付け込んで無抵抗の自分を襲ってきていた一部の貴族の嫡子たちの間で、自分を守るためにおおぴらにされただけだ。彼らも自分たちの無体に関わる話を簡単に公言することはなかった。

だからといって、自分が特別などとは思えなかった。アレクセイはそういう人だ。彼にはいくつものすべきことがある。彼の双肩にはあまりに多くのものが乗っている。彼が背負うものは重く、多すぎて、いかに重要なものであっても大義のために切り捨てることが、もはやその身に沁みついていて、捨てることを何とも思わないようだった。その理想とその現実主義についていけないものは、使えないものであると、やはり彼は切り捨てた。
あの人のことを僕はまだまだ知らないし、たとえその愛が全部向いていたのだとしたって、彼を構成するすべての中ではちっぽけだとすぐにわかった。

いつだって、彼の瞳の空虚さに、自分の心を戒められている気がしていた。



ルブランが退出した後、その場で仕事を待ち、そのまま寝室に連れこまれた。事が終わると、珍しくアレクセイはけだるげに天井を見上げてぼうっとしていた。忙しい人だから、すぐに別の仕事にうつっりだとか、すぐさま寝入ったりだとかが多いのに。

思わず手持無沙汰になり、一応隣に寝転んではいたが、そっと肩をだかれて思わずびくついた。

「そう緊張するな。君はいつまでも初々しいな」
「…そうは言われましても…」
「エステリーゼ姫と仲が良いそうだな」

突如でてきた名前にフレンは困惑する。エステリーゼは評議会側の擁立する皇帝候補だ。護衛対象でもあり、敵でもある。そのような微妙な間柄で、まずい接し方をしてしまったのかもしれない。

「ええと、どうやら親近感を持っていただいたらしくて。歳が近いせいでしょうか。…その、やはり、よくなかったでしょうか」
「いや、よくないことがあるかね。姫はずっと籠の中の鳥だ。姫にとって良い経験になるだろう」

真顔のまま言い放つ男が、何を考えているのかフレンは考えあぐねた。そのまま取り入れ、だとかそういうことを言う人ではないことは知っている。

「よく花を一緒に見ていると聞いたが」
「ええ。庭に咲いている花に、亡くなった母が好きだった花がありまして。よくそこで休憩をしていたのですが、そのときに、エステリーゼ様と出会ったんです。彼女もその花が好きらしくて、よく見かけてはいたのですが、エステリーゼ様も母上を亡くされていると聞いて、そこから少し親しく…」
「…その花は?」
「はい?」
「…その花の名は、なんという?」

そういう経緯で出会ったのか、やましいことはないかなどの尋問なのかと身構えていたフレンは度肝を抜かれた。おおよそ、花と縁のなさそうな男が、いったい何に興味があるというのだろうか。
フレンの動揺を見抜いたのか、アレクセイは愉快そうに笑って付け加えた。

「別に、君を責めているわけではない。姫とはこれからも仲良くしてやってくれたまえ。最初に言っただろう、君と話をしたかった。今聞いているのは…ただの、遊びだ。ただの戯れに会話をしたいことが、君にはないわけではあるまい」

笑われて恥ずかしくなり、思わず頬を赤らめながら、アレクセイから目をそらした。

「す、すみません。つい、その」
「それで、その花は?」
「はい、ええと、ヒヤシンスです。黄色や白のものを母は気に入っていました。城にきてびっくりしましたが、たくさん色があるんですね」

そうか、とアレクセイは目を細めた。

「君も好きか?」
「私はあまり花はわかりませんが…そうですね。城の庭のようにたくさん咲いていると、とてもきれいだと思います」

フレンがそう言って振り返ると、アレクセイはうとうととし始めていた。フレンは少し笑って、そっとベッドから抜け出た。

こんな風に、なんでもない会話が一つあるだけで、あなたはまた僕を縛るようになる。
自嘲するようにフレンは笑った。何から何まで、この人の手のひらの上だ。

馬鹿げている、と自分でも思った。


***


寒さが少し和らいで、花たちが城の庭で咲き始めたころ。魔導器がなくなって初めての春。新しく旧騎士団長の部屋に移ってきたフレンが初めての冬の終わりをそこで迎えて、一斉に咲き始めた花壇が部屋の窓からよく見えることに気が付いた。あれはきっと、ヒヤシンスだ。

以前はあんなところに花壇はなかったと思うから、最近できたものなのだろう。
懐かしい花の名に、昔のことを思い出してから、久々に花でも見ようとフレンは立ち上がった。


花壇には色とりどりの花が並んでいた。その中の一角に目当ての花は固めて植えられている。特に紫や赤色といった色の派手なものが部屋の窓からよく見えるような位置にまとまっていた。立派な花壇をじっと眺めていると、庭師が歩いているのが見えた。物珍しい人物の登場に興味があるのか、中年の庭師はそのままフレンに近づいてくる。

「おや、フレン様。お花がお好きですか」
「そうですね――あまり詳しくはないけれど。この花壇、いつできたんです?気がつかなかった」
「ええと、去年の暮れですかねえ。できたばっかりですよ。アレクセイ閣下のご命令だったんですが、途中で亡くなられてしまって、どうするかってなったんですが、まあ花壇くらいいいだろうと続行しましてね」
「アレクセイが?彼は城の庭園を管理していたのか」
「いいえ。珍しいこともあるもんだなと。今考えれば何かしらの計画の前段階だか、カモフラージュにでも使う予定だったのかもしれませんね」

じゃなかったらこんな花を植えろだなんて言わないでしょう。

庭師が花を指してそう言った。

「こんな花、とはどういう意味なんですか」
「あんまりいい花じゃないんですよ。白いのとか桃色のとか、淡いのならいいんですけどね、あんまり良い曰くがないんですよ。嫉妬だとか奪いあいだとかその挙句の死だとか、そういう伝説にあやかったお話がついてましてね。花言葉ってあるでしょう。可愛らしいとかひたむきだとか、そういうのもあるんですけどね。たとえばそっちの真っ赤なのは嫉妬でして」

フレンの目の前の赤いヒヤシンスを指さして、ね、城の花壇には合わないでしょう。と庭師は付け加えた。確かに、意味もさることながら、フレンの見たことのあったものよりも色はきついし、花壇自体も中央で自己主張をするきつい色のヒヤシンスをうまくまとめるのに苦労しているようだった。庭師は屈んで紫色の花弁を撫でた。

「こいつは特にひどい。“私を許してください”なんていう花言葉なんですよ」
「――――」
「ね。アレクセイ閣下、きっと花なんかには興味がなかったんでしょうね。なんですかね、花屋と癒着でもしてたんですかね」
「……そうですね。花屋と癒着して意味があるのかわからないが、…もしかしたら、単純に、彼が好きな花だったのかもしれない」
「かもしれませんねえ。では、私はこれで」

バケツを手に持ち、去っていく男を見送って、フレンはもう一度振り返った。中央の派手な区画には赤や紫といったヒヤシンスが咲き乱れている。

「………そんな、馬鹿な話は」

あるわけが――ない、のに。


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